営業管理職時代の、忘れられないお話
参考:生保営業最強倶楽部のニュースレターのために吉野真由美(よしのまゆみ)が執筆した内容です。
今回は、私が営業の管理職として第一線で活躍していた時の、思い出に残るエピソードをお話したいと思います。
営業管理職とは、自分が採用し、育成したスタッフたちの業績、イコール、私の業績であり、またそれが報酬に直結していました。つまり、スタッフが売れなければ、私の報酬はタダ、という世界でした。よって、当然ながら、心血を注いで育成に励んでいました。
そのため営業管理職時代は多忙で、朝5時に起き、メンバーに対してメッセージを書き、元旦以外の364日、毎日配信していました。朝8時からは、日本全国に存在するメンバーと個々に電話で朝礼をおこない、その日のスケジュールを確認し、プレゼンのアドバイスをおこないます。
150名のメンバーをかかえていましたが、いつでも、彼、彼女らの数字が、小数点第二位まで思い起こすことができました。(小さな契約は1件とカウントされず、小数点扱いだったのです。)
それぞれが自分の目標を達成し、そして、得た報酬によって自分の人生の夢を現実のものにしていく・・・それを見ているのが本当に楽しかったです。
入社してきた営業メンバーたちは、最初は「売れない・・・」と言っては泣き、トークに自信をなくす事もありましたが、次第にそれは「今日も売れました!」という喜びの涙に変わっていきました。
一般的には、管理職は、自分が採用、育成した人たちのことを「部下」と表現します。が、私はスタッフと管理職はどちらが上でも下でもない、という考えかた、「部下」とは言わずに「メンバー」と言っていました。
優秀だと判断した営業マンが売れない?トークに問題があった
さて、そんな熱い営業活動をおくる中、とてもさわやかで優秀なHさんが入社してきました。
前職までのキャリアも申し分なし。パッションも表現力もあり、コミュニケーション能力は極めて高い人でした。営業職として申し分ない能力を身につけていたため、私は、Hさんは絶対に売れると確信していました。
しかし、活動しはじめて3ヶ月経ったころ、Hさんの成績がふるわないことに気づきました。営業成績が平均を大きく下回っているのです。
「おかしい!」と思った私は、すぐにHさんに同行することにしました。「事件は現場で起こっている!」と同じく、「理由は現場にある!」と思っていましたから。
同席したところ、Hさんが申込がいただけない理由がわかりました。Hさんは、「ある言葉」を口にするのです。NGワードを営業トークに使ってしまっていたのです。
それを聞かれたお客さんは、口ごもってしまい、否定的な返事をしているのです。それを必死に修復しようとするHさん。断りの返事を心の中で決めてしまったお客さん・・・。
Hさんが口にしていた言葉は何だと思いますか?
皆さんもよく使いがちな言葉がNGワードだった?
それは、「いかがでしょうか?」という言葉だったのです。
タイミングとしては、商品説明や金額説明が終わった後です。「これこれしかじかで、こちらのプランで、この金額になります。「いかがでしょうか?」と言っていたのです。この言葉が出た瞬間、私はドキっとしました。
「いかがでしょうか?」「いかがですか?」という言葉は、発する営業側の心理としては、お客さんのご意向を伺いたい、お気持ちを尊重したい、という考えで発しているのです。
しかし、言われたお客さんの方としては、気持ちが決めきれていない、申込を決断するほど情報がない状態で、「いかがでしょうか?」「いかがですか?」と質問される。質問されたので、「YES」、「NO」、を答えなければならない、そんな気持ちになってしまうのです。
「いかがでしょうか?」「いかがですか?」という質問に対する答えは3つです。
- 1,「お願いします」→契約
- 2,「ちょっと考えさせて下さい」→保留
- 3,「今回は結構です」→断り
商品説明の直後の「いかがでしょうか?」に対して、すみやかに1の答えが出ることはめったにありません。どんなに営業トークを頑張っても、ほとんどの場合は、2か3になるでしょう。Hさんが提案しても提案しても売れない理由はここにあったのです。
「疑問文」から「肯定文」に変えることが”コツ”
では、どうしたら良いのでしょうか?
営業中、顧客にしっかり考えてもらい、出るべき質問があったら出させ、トーク内容が一方的になることなく、相手の意向を伺い、きちんとリアクションをいただくためにとても良い言葉があります。
それは、さきほどの「いかがでしょうか?」とは、たったの一文字しか違わない言葉なのですが、「いかがでしょう」です。
「いかがでしょう」には、「?」マークはつきません。肯定文にするのです。よって、顧客は返事を要求されていないのです。
顧客も、質問された、とは思わずに、自分に考える余地を与えられた、と感じます。自分の意向も尊重してもらえるのだ、一方的に提案をつきつけられているわけではない、という印象を受けることができるのです。
営業は「いかがでしょう」と言って、少し相手が考え、提案内容を咀嚼する時間を与え、穏やかにリアクションを待てば良いのです。
すると無意味に断りを誘発することなく、顧客と落ち着いたコミュニケーションができるのです。
ちなみに、電話でのアポ取りでも同様です。「◯◯の件で、お伺いしたいのですがいかがでしょうか?」はNGです。
Hさんは、「いかがでしょうか?」を「いかがでしょう。(その後、黙ってリアクションを待つ)」を実践することにより、その後、めざましく業績を上げ、営業マンとしてトップに躍り出ていきました。
たった一文字違いで大きな違い。日本語って繊細で面白いですね。
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